昨今のスキャン作業のあれこれ
図面はとても重要!
昨今、早くて格安なスキャニングを行う業者さんが増えてきました。もちろんコストカットとかいろいろ工夫された結果だとは思うのです。ただ、「コストカット」のやり方如何では
「それなりの仕上がり」
「満足のいかない仕上がり」
だったとしたら?
当然「早く、安く」するには当然それなりの理由がございます。
その一つが
「カメラタイプの上面スキャナー(ワンパス、フラッシュタイプ)
を使用する方法です。
「作業性の良さから作業単価を抑えられる」というメリットの反面、
ネガ要素もそれなりにございます。
<理由1>読み込み精度が?
上面スキャナーはセンサータイプとカメラタイプあるのですが、ことカメラをつかって、上面からスキャニング(弊社では「撮影」といってますけど)していくタイプは特に、
・原稿のめくりが楽
・スキャンスピードが速い(カメラ式は特に)
一見よさそうに思えるメリットではあるのですが、これ作業者が楽にできる分、画質的なものは正直
「二の次」
になってしまっている事が多いようです。
よ~く考えればわかるのですが、
「カメラはレンズを使う」
というのが一番のネガ要素なんです。レンズをつかうことで画像にレンズ歪みがどうしても発生してしまいます。つまり、四角いものが極端に言うと楕円みたいに画像が歪むのです。歪んだ画像はつかえませんから、補正します。ところがもともとが歪んでいるので補正かけてもレンズ中心部はよいですが、端に行くほど誤差がる上に強制的に直すので「全体的な図面の誤差」は治りません。
「適当に映っていれば良い」
と思われるのであれば問題にはなりませんが、図面が上下左右で誤差が発生するのは問題があると弊社では考えてます。図面の縮尺スケールが全く使い物にならなくなるのですから。
なお、弊社で確認した際はA1原稿で長辺で1cm、短辺で5mm位の誤差は実際に確認いたしました。
精度が良い!とはとても言えないです。
<理由2>原稿の距離
これは大きな図面をカメラのレンズに収めるには、距離を取らないとスキャニング(撮影)できませんから、どうしても原稿と機材の距離がある程度必要になります。
「なに、距離取ろうが問題はなかろう?」
と思うかもしれませんが、そこにも大きな落とし穴があったりするのです。
距離をとることで、「薄い色」「細い線」などは画像化したとき、見えにくくなるのです。われわれ人間もうこのような状態のものを見る時は近づいてみたりしますよね。でもカメラは図面を全面にとらえないといけませんから、近づくことはできないのです。それとライティングにもよりますが、白抜け(ハレーション)の影響も顕著にでます。薄いうえに下地を飛ばすライト。どうみても薄く淡い原稿は苦手なのは自明の理です。
また距離を取る分小さく細かい文字や数字はスキャン時に団子状になって画像化されることもありえます(スキャンはラスター画像化でもあるので、若干線が太る傾向があります。)
<理由3>解像度
これはスキャンするセンサーのサイズ問題であって、
「A1で300dpi相当、A2で400dpi相当」
くらいまでしか使えない機材があります。ここでよく見ていただくと、ふと疑問がいくつか出てるくはずです。
1、A2は400dpiできるのにA1は400dpiできないのはなぜ?
2、解像度が「~相当」の「相当」の部分が気になる
の2点です。
1については使用するセンサーのサイズ問題からでこれは「物理的な問題」なので、どうにもなりません。センサーを大型化すれば違うんですが、そうなるとレンズもそれに合わせえる必要もあり、コストがあがってしまうので、現実的ではないです。
センサーのサイズが決まってしまっているのでA1のスキャンサイズ(撮影サイズピクセル数)を取れるけれど300dpi相当が物理限界なんです。別の言い方をすれば、スキャンできるピクセル数が決まってしまうためA1サイズになると「300dpi相当」までしか画像化できないのです。
2については上記のセンサーのサイズとスキャン(撮影)からくるもので、画像歪みななどもありますし、センサーの仕様からサイズに対して割り出してみると、正確は〇〇〇dpiとは言えないんですよね。なので、「~相当」と濁してるんです。
つまり「リアル300dpi」ではなくて「限りなく300dpiに近い解像度」と言い換えられるのですね。
<余談>
ちなみに、弊社では基本A2以上の図面スキャンは300dpiを基準にはしておりますが、原稿によっては解像度を上げて作業する必要があったりしますので、この段階でこの機材の選択はNGとなりました。
解像度もリアル解像度と増感した解像度があります。300dpiで読み込み600dpiで書き出すやり方です。数字上は600dpiですが、ソフト上で解像度を上げてるのでリアル解像度ではないので、ややこしいですが、やはりリアルより質は落ちます。入力時が300ですからね。それなりです(これは少々胡散臭いやり方だと思ってます。)
<理由4>誤魔化しのためのカラー化?
これは図面スキャンをモノクロスキャン(2値)で作業すると薄い色、文字などが判読しにくいので、「補完するため」カラースキャンをお客様に勧めてるようです。
「原稿の青焼きと見た目同じになりますよ!」とか言っているそうです。
(※これは実際にお客様から聞いた話です)
機材的に解像度あげれないのと、細線や薄い色が苦手なんで、カラーで中間色を補完しそれっぽくデータ化できるからです。
一見カラースキャンの方がよさそうに思えるのですが、カラー原稿ならともかく一般的な青焼きのスキャンの場合は
・データ量がものすごく増える
・大きな原稿のカラーはデータ量が大きくあとあとの処理で大変
・表示に時間がかかる。
と実は
「デメリット結構大きい」
のです。実は白焼き(普通紙コピー)でもカラー読み込みするようです・・・。(先のネガ要素補填のため)
特にデータ量が多いとプリントアウトする際に非常に困るはずです。枚数が多すぎると連続してプリントアウトできないことも。間違ってもマルチページで大きなサイズまとめてしまうと、あと大変です。
「カラーとモノクロのスキャンが同額のところ」
は間違いなく「画質」はあまりよろしくないと思って間違いないでしょう。
カラーだから、綺麗に映ってるわけではないですよ!モノクロだと対応できないので、カラーでなとかかんとか見えてる感じをだしてるだけです。なお、カラーのすると拡大時にボケ感がモノクロ以上にでますので、実際には引いて見た時はよいけど、中身はね・・・。となるはずです。
折り込み製本の分解と再製本
製本の分解・再製本は自社内処理?
これを自社内で対応できるところは意外とすくないです。普通は専門の製本業者さんに製本の分解と再製本を頼むケースが大半です。この場合納期が自社に作業時間に+1週間くらい見ていただいたほうがよろしいかと思います。
弊社の強みは長年の経験と実績があるので、
「自社で製本の分解と再製本ができる」
のですが、それでも中には分解できない製本も存在しますけれども、ほとんどの図面製本の分解・再製本作業は可能だと自負しております。実際に専門の製本業者さんからもお褒めいただくレベルです。
必要に応じ観音製本でも簡易ですが、補修して作業することも多いです。流石に破けた紙は元通りに修復はできませんが、弊社では場合によっては書籍修復につかう特殊な部材をつかって補修する場合があります。よくあるような観音製本の背中部分が異常に膨れてしまうのを少しでも減らすときに使用します。
原稿の溶解処理
スキャン原稿の溶解処理は割と業界内ではポピュラーな処理方法として認識されてきつつあります。
「スキャンデータ納品時に照会処理済みの書類」
がセットになって納品するパターンも見受けられます。弊社が問題視してるのが「セット」での納品のやり方です。「溶解処理」してしまうと原稿がないので、万が一スキャンしたデータに不備があった場合、作業のやり直しがきかないのです。
もちろん原稿枚数とスキャンのデータ数の合致が当然ではありますが、スキャンの画像に関しては問題がある場合も当然想定されるわけです。
特に書類のスキャンに関ては解像度を一定にしてすべてスキャンする方法が一般的なようですが、これ実は問題があったりします。
1、文字・数字の判読
スキャンの解像度や器材設定が適切ではなかった場合、このようなことが起こる可能性が高いです。特に安価な価格で作業を請け負うところほど、「低解像度・一定の解像度」で行う傾向が強いのです。安価な価格は「作業工程の簡略化」を招きやすいです。
さてここからは少々ややこしいのですが、資料などのスキャンの場合原稿サイズがA4ないし、A3位がほとんどだと思います(古いとB5とかB4もありますが)この原稿サイズってわりと小さめなんですよね。つまり、スキャン画像のピクセル数が少ないともいえるので、これを補完するため解像度でち密さを加え必要な画質を担保するのです。
「小さい原稿は高解像度、大きな原稿は低解像度」
というスキャンの原則があるので、300dpiとかでも原稿によっては画質的に不足していることもままあるのです。もっともそれ以下の解像度で資料スキャンは問題外です!
2、スキャン漏れ
枚数ではなく箱単位などで請け負っている場合は、原稿枚数を確認せず、単純にスキャンした枚数すらカウントしてチェックしてないケースもあるようです。請負が「箱単位」ですので、枚数請求ではないからです。もちろん、すべてスキャンした枚数をカウントして作業しているとは思いますが、機械にしろ人間にしろミスは絶対ないとは言えません。ましてや作業枚数が膨大なら原稿1枚に対してそこまで時間かけてたりしたら、採算が合わないからです。
上記2点を加味しますと、溶解処理を行ってしまうとどうにもならなくなるので、スキャン画像を確認したのち溶解処理に進むべきだと思います。付け合わせの確認作業大変ですけどね。ちなみに安価で作業する場合のチェックは当然甘いです。時間かけるわけにはいかないのですから、とにかく「量をこなさないといけない」のですからね。「判読よりスキャンでできていれば良い」がチェックの仕方ですから、「画質」とかは二の次になりがちなのです。
読めないスキャンデータに対価を払うのは、さてどうしたものでしょうかね?